きいろいゾウ 西加奈子

ついつい面白かったと思う本は、読み始めのスタートダッシュが良いものを選んでしまいがちです。しかし、珍しく、スロースタートなこの本に、読了したときには、ハマってしまっている私がいました。

西加奈子さんの「きいろいゾウ」。読む本を決めあぐねていた私は、活字への枯渇感から、西加奈子さんなら間違いないだろうと、エイッと思い切ってこのを1冊を書店の本棚から取り出したのです。

読み始め、主人公の女性の、狙ってる感満載の、感性豊かで、天然で、不思議ちゃんを意識させたいという彼女目線の文章体に辟易したのが正直なところです。

しかし、今思えば幸運なことに、他の本を選ぶ暇がなかったため、失礼ながら我慢してでもこの本を読み進めることを選びました。今思えば本当によかったです。

物語が、動き出してくるのは、なんと中盤過ぎです。それまで持ちこたえられない方には、この本は向かないかもしれません。

静かで退屈に進められる日常性を感じさせることが、西加奈子さんの願いだったのかもしれません。案の定まんまと引っかかった私は、そこからのドラマの展開に、自分の人生も何でもないようなことにこそ大切なことが潜んでいると、気づかされる思いがしました。

ネタバレになるのは控えたいので詳しい事は書きませんが、田舎や都会や、老人や子供や、後悔や夢を織り交ぜながら人生を描き、たとえ見えなくても、どんなことにも奥には愛情が滔々と流れていることを教えてくれたような気がしています。

そしてー。難しい夫婦という愛情の形。この本質に物語を織り交ぜながら迫った本書は、抱きしめるに足ると感じています。